モダニズム建築を代表するフランスの建築家ル・コルビュジエが、1931年、フランスの美術雑誌『カイエ・ダール』の編集長クリスチャン・ゼルボスに宛てた手紙の中で初めて述べた美術館構想。特定の正面を持たず、地下から建物の中心へと入り、そこから外側に向かって渦巻き状に延びる順路が設定される。時代の経過とともに収蔵すべき作品が増えると、順路の延長線上に外部に増築され、展示スペースを広げることができる。
1929年に計画したジュネーヴの世界文化センター「ムンダネウム」以来、何度か計画として発表しているが、実現した例としては、バングラディッシュのアメーダバード(1957−59)、インドのチャンディガール(1964−68)の他に、東京上野の国立西洋美術館(1957−59)がある。西洋美術館は、1998年の改修により中心に入口を持つ順路が復活し、当初のル・コルビュジエの構想に近づいた。一方で、ル・コルビュジエは自然光による照明で一日の光の変化を展示室に採り込むことも主張しており、メニル・コレクション、ブレゲンツ美術館など、今日主流となりつつある自然光による照明の先駆けとしても注目される。
(鷲田めるろ)
関連URL
●ル・コルビュジエ http://www.lecorbusier.com/
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