現代美術の批評で、主に1960年代から70年代にかけて現われた、リテラルな=文字どおりの「もの」あるいは「平面」を「作品」とする傾向を言う。直截主義、あるいは即物主義などと訳されるが、いっそ「そのまま主義」とでもしてしまったほうがわかりやすいかもしれない。これはさらに二通りに分かれる。ひとつは、1960年代に現われたフランク・ステラ、ラリー・プーンズらによる、絵画のリテラルな
平面性を強くうち出した作品について、どちらかと言えば肯定的な立場から認める立場。もうひとつは、マイケル・フリードがいわゆるミニマル・アートについて否定的な立場から言う場合(この場合ステラ、プーンズはリテラリズムではない)。一般には後者が問題にされることが多い。フリードはミニマル・アートを、いわば、そのあたりに転がっている「もの=客体」とはこういうものだという、誰もがこの「もの」について抱いている観念を、そのまま作品にしただけだと非難する。この「即物性=リテラルネス」は、アンソニー・カロの作品のような優れた芸術だけが備える、「ラディカルな抽象性=アブストラクトネス」と真っ向から対立するものとされる。逆に抽象性とは、「そのあたりに転がっているもの」とはラディカル=徹底的に違う存在の仕方をしているということを、意味している。
(林卓行)
|