絵画という媒体の本質であり、美術評論家クレメント・グリンバーグがモダニズム絵画において、追求すべきだと考えたこと。彼によれば、絵画というジャンルの最大の特徴はキャンヴァスの「平面性」である。モダニズムの本質は、自己批判的傾向の強化にあるという。芸術において、それはそれぞれの媒体の特性を活かして、純粋になることを意味する。絵画の純粋化の方向性は、ただの平面に陥ることなく、平面性を追求することにあった。こうして、抽象絵画は自律化する。グリンバーグのこの主張は、ミニマル・アートの代表的作家であるドナルド・ジャッドの論文「特殊な物体(Specific
Object)」(1965)において、字義通りに解釈される。ただし、ジャッドにとっては、グリンバーグが退けた、ただの平面がもたらす物体性こそが、重要なのである。
そこで、ジャッドは絵画という媒体そのものに限界があると考え、三次元のオブジェを制作することになる。ジャッドにとっては、グリンバーグがよしとしない平面にはまだイリュージョンが残っているのだ。こうして、ミニマル・アートは「平面性」をひとつの契機にして、徹底的にイリュージョンを排する芸術動向として、1960年代以降のアメリカを風靡することになる。
(三上真理子)
関連URL
●D・ジャッド http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/d-judd.html
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