ニューヨーク近代美術館で開館3年目にあたる1932年に行なわれた建築展。同館での最初の建築展である。1929年に『近代建築――ロマンティシズムと再統一』を著した建築史家ヘンリー=ラッセル・ヒッチコックJrを中心に、後に同美術館建築部門のチーフ・キュレーターとなるフィリップ・ジョンソン、それに同館ディレクターのアルフレッド・バーJrが加わり企画した。フランスのル・コルビュジエ、ドイツのヴァルター・グロピウスとミース・ファン・デル・ローエ、オランダのJ・P・P・アウトという、近代建築運動の中心的建築家に加え、フランク・ロイド・ライトなど4組のアメリカ人建築家を模型や写真、図面によって展示し、古典主義様式が主流であったアメリカに近代建築を伝えるうえで大きな役割を果たした。世代も上で、ステンドグラスなど装飾も多用するフランク・ロイド・ライトをこの展覧会に含めるかどうかで内部で意見が分かれ、ヒッチコックとジョンソンは、展覧会カタログ以外に、ライトを省いた『インターナショナル・スタイル』という本を出版。展覧会自体よりもこの本が有名になり、「インターナショナル・スタイル」という呼称の由来となった。展覧会はその後、アメリカ各地を巡回した。当初から建築・デザインを含む方針で活動を開始したニューヨーク近代美術館では、この展覧会終了後、正式に建築部門が設けられた。
(鷲田めるろ)
参考文献
●佐々木宏『「インターナショナル・スタイル」の研究』(相模書房、
1995)
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