19世紀以前の西洋芸術のカテゴリーには組み込むことのできない、提示された「もの」のこと(オブジェという言葉はフランス語で「もの」「対象」を意味する)。第一次大戦後、ドイツに登場したダダイストたちがこのオブジェの創始者である。彼らは「芸術」とは一見何の関係もない、日常の物体・廃品を組み合わせて立体作品を作り、画廊に展示した。オブジェによって既製の芸術のもっている権威主義や技術主義を否定することが彼らの目論見であった。しかし、ダダイズムでは反抗の身ぶりであったオブジェはシュルレアリスムの登場とともに、人間の意識下のイメージを探る重要な方法へと変容した。一方で、(ダダイズムにも分類される)M・デュシャンは、大量生産された工業製品(便器や自転車の車輪)をそのまま提示することで、芸術そのものや芸術をめぐる制度についての思索を求めた。このデュシャンの方法論は特にレディ・メイド(既製品)、ファウンド・オブジェ(見出されたもの)とも呼ばれている。
(苅谷洋介)
関連URL
●デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
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