デザインや絵画に用いられる「絵文字」「絵ことば」の総称。「絵文字」「絵ことば」の歴史は古くは古代エジプトのヒエログリフにまで遡るが、「ピクトグラム」の場合はむしろ図記号という側面が強く、言語によるコミュニケーションを主目的としたヒエログリフとは区別される。デザインの領域では、その起源は1920年代にオーストリアの哲学者O・ノイラートが子供の視覚教育を目的として考案した「アイソタイプ」にあるとされ、統計図表などに用いられる数量比較のための人型は、その後の「ピクトグラム」のモデルとして広く普及し、1960年代には世界的な規模で流行した。その日本への波及は、勝見勝らが推進した東京オリンピック関連の諸々のデザインにうかがうことができる。他方、絵画においても「絵文字」「絵ことば」は長い歴史を持っているが、従来の文字とも図像とも違うそのコミュニケーションの性質を指摘したのがフランスの哲学者J・デリダである。デリダは音声言語の優位に立脚した「ロゴス中心主義」を批判する立場から「ピクトグラム」の可能性に注目、その典型例をH・ミショーらに見た。詳細は『根源の彼方へ――グラマトロジーについて』(足立和浩訳、現代思潮社、1978)を参照のこと。
(暮沢剛巳)
関連URL
●デリダ http://www.hydra.umn.edu/derrida/jd.html
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