「既製品」を意味するこの言葉は、M・デュシャンが日常品の中から選び出した既製品になんら手を加えず、芸術品として美術館に展示した「作品」のことを指す。本来の用途から切り離された大量生産品は、美術館という特殊な空間に置かれることによって「作品」としてのステータスを獲得するのである。デュシャンは1913年に自転車の車輪を台所の椅子に倒立させ回転させたとき、それが芸術作品として成立することに気付き、以後、《瓶乾燥台》(1914)や《泉》(1917)などの作品をつくりだした。レディ・メイドは作品がデュシャンによってのみつくられたものではなく、もともとは違う目的のためにつくられた大量生産品であるにもかかわらず、デュシャンの作品としなければならない矛盾をかかえている。こうした芸術家と作品の新しい関係は、20世紀の芸術の問題を端的に示唆している。すなわちその後の特にアメリカにおける偶然性、行為、概念性、既製品の使用(ファウンド・オブジェ)による作品創作に与えた影響は大きい。デュシャンのレディ・メイドはのちの廃物芸術(ジャンク・アート)やアサンブラージュ、ポップ・アートに多大な影響を与えたのである。
(山口美果)
関連URL
●デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
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