「怠け者のアート」。1991年の暮れ、批評家J・バンコウスキーが『アート・フォーラム』誌に掲載した論考で提唱した、都市部に新しく出現したslacker(「定職につかず、また働こうとしない者」の意)という社会階層の価値観に対応した美術動向の総称。映画やTVが映し出すストレートな性と暴力のイメージを具体化してみせたK・ノーランド、J・ピアソン、K・キリムニク、L・パーソンズらの作品にその典型が実現されているとされ、その背後に潜む勤労意欲や倫理観の希薄さは、アンダーグラウンドのロックとも多くの面で共通している。一方、「流浪」という側面は、フルクサスにも通じるものがある。「スピル」と呼ばれる乱雑なオブジェをはじめ、「おぞましい」イメージを喚起するインスタレーションやドゥローイングが多用されるので、その表現はお世辞にも洗練されているとは言いがたいが、その稚拙や野卑さゆえに、slackerの価値観を力強く代弁していることも、また確かである。
(暮沢剛巳)
関連URL
●K・ノーランド http://www.dnp.co.jp/gallery/ccga/ca/kenneth/kenneth.html
●J・ピアソン http://www.photology.com/piers/
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