下地処理の施されていない素地のキャンヴァスに絵具を滲み込ませる技法。抽象表現主義の絵画における「オールオーヴァー」な画面の攻略という課題を「ポストペインタリー・アブストラクション」の世代が引き受けるとき、画家たちは絵画を「色彩のフィールド」として純化させようとする。B・ニューマン、M・ロスコを経て、P・ジェンキンスやH・フランケンサーラーといった画家たちの方法論を参照したM・ルイスとK・ノーランドは、アクリル絵具の開発と並行しステイニングの技法を効果的に用いた。染めた布地のような、キャンヴァスの表面と絵具の相互浸透は、通常の絵画における「地」と「図」との物理的な関係(キャンヴァスの表面とその上に塗られた絵具)を宙吊りにし、色彩を純粋に視覚的なものとして現前させる。ルイスの一連の「ヴェール絵画」は、絵画平面をあたかも蜃気楼のような、実体を欠いたもののように見せる。グリンバーグは1960年のテクスト「Louis
and Noland」でルイス作品のステイニングがもたらす効果と「ファクチュール(絵具の層の構造)」の演じる役割に言及し、「入り込める、曖昧な平面、いわばピクチュアを後の方から開示する」と記述している。
(上崎千)
関連URL
●ニューマン http://www.artcyclopedia.com/artists/newman_barnett.html
●ロスコ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-rothko.html
●フランケンサーラー http://www.nmwa.org/legacy/bios/bfranken.htm
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