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JAM:東京−ロンドン/田中栄子展/新版 日本の美術/ピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踏団
荒木夏実[三鷹市芸術文化センター] |
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| ●JAM:東京−ロンドン ロンドンと東京のストリート・カルチャーに焦点を当て、グラフィック・デザイナー、ファッション・デザイナー、ミュージシャン、アーティスト、フォトグラファーなど43組の作品が紹介される。ジャンルを超えた都市の「空気」が伝わってきそうな展覧会だ。ロンドンと東京の雰囲気の比較、またイギリス人の日本へのイメージなど垣間見ることができるだろう。 ●田中栄子展 「JAM:東京−ロンドン」と同時開催の若手作家を紹介するproject N。色面と直線のみで独特の空間を描くユニークな作品を発表する。回廊の展示壁に複数掛けられた様子はかなり面白いことが予想できる。 ●新版 日本の美術 伝統のもう一つの継承者たち 明治維新、敗戦など大きな制度・価値観の変化を経てもなお日本という風土に生きる感性や嗜好に着目し、そのような視点を意識して制作を続ける現代作家たちの作品を紹介するという展覧会。彼らの「意識」がどのようなものであるのかについてはやや疑問はあるが、かなり「デキる」アーティストたちの競演は楽しみである。 ●ピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踏団 60歳を過ぎても舞台芸術の先端に立ち、精力的にダンス作品を発表し続けるピナ・バウシュがまたやってくる。 人間の身体にはこんな表情もあったのかと驚かされる振り付けとダンサーたちの動きは刺激的である。さらに人間の愛や苦悩、葛藤を描きだすドラマにいつも感動させられる。彼女の作品には心の均衡を欠いた人物がしばしば現れるが、彼らは悪人でも特別な人でもなく、誰もがもつ愛憎、欲求、悲しみの感情を抱えているのである。その姿は見ていて泣きたくなるほど切ない。しかし、バウシュの作品の根底には大きな愛と救いがあり、それが生きる勇気へとつながる力になっている。 身体表現を通したヒューマン・ドラマを楽しみたい。 左上・左下:田中栄子展 中上:新版 日本の美術 伝統のもう一つの継承者たち 右上:JAM:東京−ロンドン 中下・右下:ピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踏団
●学芸員レポート 3月2日から始まる「オフロ・アート−銭湯の背景画」展に向け、目下修羅場を迎えている。会場の解説パネルやキャプション、カタログの作成、レクチャーやワークショップなどのイベントの準備、受付や販売物の手配等々、仕事は尽きない。もっと早くから準備すれば……と反省もするのだが、展覧会直前独特の加速度は止めることができない。どんなに練ったプランも作家と展示デザイナー、学芸員のアイデアによって変わっていく。特にオープン直前はみんなの考えが急速に熟していくので、何かと変更があるのだ。つくづく展覧会は生き物だと思う。 今回の展覧会は新作が多い。まず目玉となるのは初日に公開制作するペンキ絵師3人の富士山の背景画である。東京に3人しかいない現役絵師が一堂に会することは滅多にない。どんな展開になるやら楽しみである。
今回の企画はマスメディアからも好反応をいただいている。しかし、多忙な中のマスコミ対応に思わずうれしい悲鳴をあげてしまう。特にテレビの取材は、カメラの導線上作品の位置を替えたい、アナウンサーに作品を持たせてしゃべらせたいetc.「撮りたい画(え)」があるようでこちらは戸惑うことも多い。雑誌、新聞、テレビとそれぞれに異なる使命を抱えているようで、いろいろな世界があるのだなと感じる。 願わくは大勢の方に展覧会を見ていただき、忘れかけていた銭湯の背景画を思い出してその魅力にふれてほしい。 そして個人的には、プレッシャーから解放され、ほっと一息ついてゆっくりお茶を飲む時間が待ち遠しい。
[あらき なつみ] |
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