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鈴木淳「だけなんなん−遠い風景、近い日」展/
伊東聡一展 川浪千鶴[福岡県立美術館] |
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「シャガール」展や「福岡アジア美術トリエンナーレ」などの大規模展が閉幕し、6月末の福岡のアートシーンは静かですが、その中でさらにひそやかながら、あなどれない作品を発表したふたつの個展がありました。 ひとつは鈴木淳展。タイトルの「だけなんなん」とは、標準語に直せば「だからなに〜?」といった感じで、内容はタイトルどおりの本当〜に何気ない、日常風景を切り取っただけの(ときに最小限の編集を加えた)49本のビデオ作品展です。それらは、昼下がりの公園のベンチでくつろぐ人々を背後から次々に撮影したものや、川底を足でさぐってえさを探す1羽のカモメを延々撮影したものなど、明らかに退屈なのですが、そこを乗り越えて見続けていると、見る側の意識は日常そのものより、それを切り取った余白とでもいったらいいのか、鈴木さんの意識に何だか気持ちよくすべりこんでいきます。ときには「落ち」のサービスもあり、「コンセプチュアル with お笑い」と称されたこともある鈴木さんの、ソフトな、ある種の狂気を感じました。小学校を思わせる図書貸出カードを使った鑑賞方法(カードに希望ビデオ名のゴム印を押し、カウンターで受け取り、会場内の好きなモニターで見る)もなかなかいけてました。
●学芸員レポート さて、再び『「シャガール」展や「福岡アジア美術トリエンナーレ」などの大規模展が閉幕し、6月末の福岡のアートシーンは静かですが』、個人的には、ただいま開幕を目前に控えて夏休み企画展の突貫工事中です。ということで、直前広報もかねて、福岡県立美術館初の小学生向け体験型アート展のご紹介を。 この「アートにであう」シリーズは、子どもからおとなまで幅広い年代の方々が気軽にアートに親しんでもらうためのプログラムとして、毎回展示構成やテーマに工夫を凝らしながら、平成11年度の「宇治山哲平◎△□ランド展」を皮切りに、同12年に「瑛九のヒミツ」展、同13年に「もてなし」展を開催してきました。 第4回となる本展は、とくに小学生中学年(10歳くらい)の子どもたちをターゲットに、目だけでなく体全体を使ってアート・クイズを解きながら、福岡県立美術館のさまざまなコレクションを楽しく鑑賞してもらうというのが趣旨。日本画、洋画、工芸、彫刻、写真など、さまざまなジャンルの約50点の作品は、作品をもとに作られたクイズとそのイメージ・キャラクターを案内役にした(福岡のアート関係者には、有名なキャラクターの「マウンさん」と「ペランさん」も出演)7つの体験コーナーに展示されます。会場入り口でお渡しする台紙に、クイズに答えるたびに、会場のシールお姉さんから手渡されるシールを貼っていくと、最後には「クイズdeアート」特製シートが完成し、ごほうびに「アート・クイズ王」シールが進呈されるといったわくわくものです。 体験コーナーをいくつかご説明すると、<発見、大発見のコーナー>では <絵のなかに入っちゃえのコーナー>では、伊藤研之の《風景》というシュールな油彩画をもとに舞台美術のようなセットをつくり、その中に実際に入り、ハリボテとしてリアルになったモチーフを動かして、自分なりの世界に構図を組みかえてもらいます。 <久留米がすりはすてきのコーナー>では、ござをひいた大きな台のうえに靴を脱いであがることができます。そこにちゃぶ台や手織り機、久留米絣でつくった座布団・特製カルタなどを用意し、文字通り絣を身近に感じ、絣を手にとりながら模様あて遊びを楽しんでもらいます。 ほかにも袈裟などの衣装や小道具を身に着けて、作品の登場人物になりきる<変身コーナー>や、江戸時代の御用絵師が実際に使用した絵手本をもとに制作したぬり絵に、自分なりの色をつける<江戸時代の絵描きさんに入門のコーナー>など、郷土美術(特に工芸作品や御用絵師作品)が充実した当館ならではのプログラムになるはずです。 美術館は初めてという子どもたちにも親子づれにも親しみやすい展覧会、夏休みの楽しい思い出のひとつになる展覧会を目指しています。 [かわなみ ちづる] |
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