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現在、オープン企画「Northern Elements」が北海道のアーティスト16人を集め、開催されている。今後の活動が気になるところであるが、貸し画廊としても機能するアネックス部分を除いて、基本的には企画で展開していくという。かつて札幌におもしろいアートスペースができながら経営的な理由で閉じてしまったところが少なくないだけに不安もないわけではないが、彼女に限ってはきっとそんな心配は無用であろう。8月10日のオープニングレセプションには120人以上が集まったという。また、若いアーティストが彼女を手伝いために入れ替わり訪れるのだという。多くの人々に慕われている彼女がはじめたこの「ギャラリー門馬」は、単に展示スペースとして機能するのではなく、札幌の現代美術を志す人々のたまり場としてきっと愛され続けるにちがいない。ここは、美術に対するほのぼのとした愛情に満ちた空間である。
●学芸員レポート 旭川彫刻サポート隊 公園の内、商店街、橋の上、ビルの前など、あちらこちらで目にする彫刻。北海道だけでもその数は1600点を超えるという。全国的にはどれぐらいの数になるのだろうか。数十年にわたって文化的な潤いのある街づくりの一環として置かれ続けてきた彫刻も、人々の眼を楽しませるはずが、逆に不快感を与えてしまっている例が少なくないのも事実である。ブロンズには白い縦筋が幾筋も走り、鳥の糞が頭に積もり、いたずら書きや傷、シールが貼られていたりするのも珍しくない。ほとんどメンテナンスされないまま放置されている彫刻は、設置するだけで満足し維持管理に予算が回らない行政にも大きな問題があるだろう。 一般的に屋外彫刻の保全において最も悩ませているのが酸性雨の問題である。ブロンズ(青銅)が安定した金属であることは出土する古代の遺物がほとんど完全な形で残っていることでも証明されているが、近年の酸性雨にはいとも簡単に侵されてしまう。それも都会だからといって酸性雨の濃度が高いわけではなく、日本中ほとんど変わらないらしい。逆に都会の方が空気中の浮遊物に中和されて濃度が低いそうである。それでもいまのところ札幌芸術の森の彫刻にはそれほど目立った変化は出ていないのはなぜか。大気環境の専門家から聞いた話によると、酸性雨自体は彫刻に降り注いでもすぐに流れ、あるいは乾いてしまうためにそれほど悪影響を与えないという。それよりもやっかいなのが、酸性を帯びた塵なのだそうだ。凹みにたまり、それが雨で溶け出してさらに高濃度になるのだという。それならば、塵がたまらないように心がけていれば、ある程度被害は防げるはずである。そんなことを知らずに以前から札幌芸術の森で毎日行っていた清掃が、作品にはとてもいいことだったということになる。「彫刻は、日々の愛情によって、きれいに保つことができる。」それが「旭川彫刻サポート隊」に一番に伝えたかったことであった。 [よしざき もとあき] |
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