アーティスト森村泰昌はすでに蜷川幸雄の演出による芝居『パンドラの鐘』で女優家としても舞台を踏んでいるが、このたびは俳優として辻仁成監督の映画『フィラメント』に出演。森村氏が映画の撮影に入っているということは、随分まえに聞いていたので、試写会の案内をもらったときも、さほど驚くこともなかった。彼の役どころは、妻が若い男を駆け落ちして、男やもめとなったちょっとくたびれた感じの写真館の親父さん。でも、夜になるとビシっと女装をきめて街角に立つ。そんな父をもつ兄妹は大沢たかおと井川遥。森村の好演がしっとり光っていた。 [2月19日(火)原久子]