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赤派/白派

Aka-ha/Shiro-ha
更新日
2024年03月11日

建築家・建築史家である藤森照信が提唱した概念。藤森は日本の現代建築の潮流として、物の存在感を重視する流れと、存在感よりも数学的抽象性を重視する流れがあると述べた。前者は人の身体性に依るため、血の色から「赤派」、後者は人間の頭の働きにつながるため、脳の色から「白派」と名付けられた。「赤派」の代表的な建築家としては磯崎新や石山修武、「白派」の代表的な建築家としては槇文彦や谷口吉生が挙げられる。このような概念は、藤森の20世紀に対する建築観に起因している。藤森はW・グロピウスを筆頭に、薄い部材やガラスの大量使用によって、直線や面による構成や透明感、白い色などの、抽象的な建築を指向した建築家を「バウハウス派」と呼んだ。それに対して、ル・コルビュジエが《スイス学生会館》(1930)以降、打放しコンクリートや曲面を用いたことを挙げ、物の存在感を重視した建築家を「コルビュジェ派」とした。これら建築物における「抽象」と「存在」の二項対立は現在の建築にも継承されており、そこから「赤派/白派」という概念が導き出された。また建築家としての藤森は、徹底的に物の存在感を追求しており、自身を限りなく黒に近い赤という意味で「赤黒派」と呼んでいる。

補足情報

参考文献

『野蛮ギャルド建築』,藤森照信,TOTO出版,1998
『タンポポ・ハウスのできるまで』,藤森照信,朝日文庫,2001
『藤森照信建築』,藤森照信,TOTO出版,2007
『藤森照信 21世紀建築魂』,藤森照信,INAX出版,2009