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アンフォルメル

Art informel(仏)
更新日
2024年03月11日

第二次世界大戦後、フランスを中心としたヨーロッパで興った非定形(informel)を志向した前衛芸術運動。アンフォルメルを考察する上で重要なのは、中心人物のミシェル・タピエが批評家/キュレーターであったと同時に、コレクターであったという点にある。大戦によって人間が「非定形」なまでに破壊された状態を表現したフォートリエやデュビュッフェから、かつてのフランスのシュルレアリスムや同時代のアメリカの抽象表現主義、日本の具体美術協会に至るまで、混沌とした世界観をひとつに紡ぎ上げたのはタピエの蒐集趣味によるところが大きい。タピエは世界各国を訪問し、蒐集した作品に批評を施し、1952年に『もうひとつの美術(Un art autre)』として画集を刊行した。56年、タピエが来日し、いわゆる「アンフォルメル旋風」を巻き起こしたが、それが主に新聞社によって仕掛けられたものであったこと自体、タピエと資本主義の関係を象徴しているといえよう。そうした流れに加担した瀧口修造と、当時フランスを訪れアンフォルメルの実情を体験した瀬木慎一の主張とのギャップを埋めることが、日本におけるこの運動体の受容を理解する鍵となるであろう。

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補足情報

参考文献

『芸術新潮』第9巻/第2号,「アンフォルメルをめぐるスキャンダル」,瀬木慎一,新潮社
『アンフォルメルとは何か』,ミシェル・タピエ、富永惣一、滝口修造、今井俊満,座右宝刊行会,1957
「アンフォルメルとは何か? 20世紀フランス絵画の挑戦」展カタログ,ブリヂストン美術館,2011