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アヴァンギャルド

Avant-garde(仏)
更新日
2024年03月11日

仏語で「前衛」。元々は「前衛部隊」を指す軍事用語であるが、先鋭的ないし実験的な表現、既存の価値基準を覆すような作品を名指すために19世紀頃から頻繁に用いられるようになった。「前衛(的)」という問題を主題化した美術史上の論考としては、C・グリーンバーグの「アヴァンギャルドとキッチュ」(1939)が有名。その際グリーンバーグが「アヴァンギャルド」と呼んだのは、卓越した歴史意識をもって既存のブルジョワ文化を批判し、芸術的な作品/行為を通じて文化の推進と絶対的なものの探求を試みる作家たちのことであった。その成立時期が示唆するように、アヴァンギャルドというカテゴリーは近代芸術の展開(モダニズム)と不可分のものであり、無数の主義(ism)や様式(style)が現われては交替していく近代芸術の歴史は、前衛芸術の歴史そのものであると言うこともできよう。とはいえ20世紀も後半になると、「アヴァンギャルド」というカテゴリーそのものが歴史化され、「反アヴァンギャルド」的な作品・言説もまた誕生することになる。加えて、「アヴァンギャルド(前衛)」という言葉の内実が使用者によって異なることもしばしばであり、今日用いられている「アヴァンギャルド」という言葉を理解するにあたっては、その政治的、様式的、歴史的な含意にたえず注意を払う必要があるだろう。

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補足情報

参考文献

『グリーンバーグ批評選集』,「アヴァンギャルドとキッチュ」,クレメント・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳),勁草書房,2005
『美術史を語る言葉』,「アヴァンギャルド」,アン・ギブソン(加藤哲弘訳),ブリュッケ,2002