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アーツ・アンド・クラフツ運動

The Arts and Crafts Movement
更新日
2024年03月11日

19世紀後半のイギリスで興った造形芸術の運動。19世紀末から20世紀初頭にかけて、北米・ヨーロッパ諸国・東アジア、また日本の民藝運動にも影響を及ぼした。根本的には、手工芸の復興を目指す運動で、さらには、人間と事物との全体的な調和を図る社会運動。イギリスにおける同運動は、産業革命を経て生じた社会問題に応答したもので、社会改革への高い関心を特徴とする。思想の中核は、中世における職人の制作と労働のありかたに芸術の理想を見出したJ・ラスキンと、彼の理論を実践したW・モリスにある。1880年代には、彼らの教えに影響を受けた若い世代が中世的な工芸ギルドを創設し、アーツ・アンド・クラフツ運動の国際的拡大に大きな役割を果たした。A・マクマードがセンチュリー・ギルドを、84年にはW・レサビーらがアート・ワーカーズ・ギルドを、C・アシュビーが手工芸ギルド学校を設立した。同運動の名称は、87年に結成され、翌年に第一回展覧会を開催した、アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会に由来する。しかしそれより遡って、モリス・マーシャル・フォークナー商会の創設、あるいはそれに先駆ける、モリス自邸《レッド・ハウス》の建設をその始まりとすることが多い。アーツ・アンド・クラフツ運動は、イギリスはもとより諸外国においても、単一の理念や方法論、造形上の特質で捉えきれない、豊かな広がりをもって展開されていった。

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補足情報

参考文献

The Arts and Crafts Movement,Gillian Naylor,MIT Press,1971
『ユートピアン・クラフツマン』,ライオネル・ラバーン(小野悦子訳),晶文社,1985
『ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』,藤田治彦監修,梧桐書院,2004
『生活と芸術──アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで』,カタログ,京都国立近代美術館,2008
『装飾芸術』,小野二郎,晶文社,1979