アール・デコ
- Art Déco(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
1925年パリで開催された「現代産業装飾芸術国際博覧会」(通称:アール・デコ博)に由来、またそれに象徴される、1910-30年代までの広範な分野の諸芸術の傾向・デザインの様式。同博覧会は、第一次大戦後、他の主要な西洋諸国と比べて産業発展に遅れをとっていたフランスが、装飾芸術を主軸に国力を示そうとしたもの。アール・デコは一般的に、アール・ヌーヴォーとは対極の幾何学的スタイルが強調されるが、実際そこに包括される諸作品の形式は多様であり、発想源もさまざまである。キュビスム・構成主義・未来派・フォーヴィスムのモダン・アートからの影響と幾何学的形態・ジグザクの線・流線型の曲線のほか、ロシアのバレエ・リュス、エジプトやアフリカ文化の影響による異国風の表現、等々。当時はバウハウスなどアヴァンギャルドの運動とマシーン・エイジの美学が経験されており、アール・デコはモダニズムをファッション化した。初期にはフランスの芸術家たちによる高価な工芸的制作が主流であったが、アール・デコは小さな香水瓶からポスター・服飾・摩天楼建築まで広い分野の現象として、都市の大衆に消費されながら、アメリカや西欧諸国・アジアにまで波及していった。
補足情報
参考文献
『アール・ヌーヴォーとアール・デコ』,千足伸行監修,小学館,2001
「きらめくモダンの夢 アール・デコ」展カタログ,東京都美術館,2005
『アール・デコ』,ベヴィス・ヒリアー(西沢信弥訳),バルコ出版,1986
『アール・デコ──〈1925年様式の勝利と没落〉』,ジウリア・ヴェローネージ(西沢信弥訳),美術出版社,1972