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池袋モンパルナス

Ikebukuro Montparnasse
更新日
2024年03月11日

1920年代から40年代にかけて、東京の池袋周辺の地域に住んだ芸術家たちによって形成された一種の文化圏を指す。住人たち自身が積極的に用いる呼称ではなかったが、池袋周辺をパリの場末の住宅街であったモンパルナスになぞらえたことの始まりは漫画家の岡本一平による33年のエッセイなどですでに見られ、詩人・小説家・画家の小熊秀雄の38年のエッセイ「池袋モンパルナス」と詩「池袋風景」によって広く知られるようになった。画家たちが住まうアトリエ村があった地域としては、豊島区のすずめが丘、長崎村、さくらが丘、つつじが丘、板橋区のみどりが丘、ひかりが丘などで、住民であった画家たちの多くは貧しく若かった。官展や独立展のような権威ある公募展を目指す者たちも少なくなかったが、時代は共産主義の隆盛から太平洋戦争の開戦に重なっており、むしろプロレタリア美術運動、シュルレアリスム、敗戦後の左翼的な美術運動に関わった者たちによって、池袋モンパルナスのあり方が特徴付けられてきた。特に、貧困と抑圧に耐えながら誠実に制作活動を行なった新人画会の松本竣介や靉光らによって代表されることが多い。

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補足情報

参考文献

「ようこそ、アトリエ村へ! 池袋モンパルナス」展カタログ,板橋区立美術館,2011
「池袋モンパルナス 小熊秀雄と画家たちの青春」展カタログ,読売新聞東京本社,2004