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『インフォーマル』セシル・バルモンド

Informal, Cecil Balmond
更新日
2024年03月11日

『インフォーマル』(2002)は、総合エンジニアリング・コンサルティング会社オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ社所属の構造エンジニア、セシル・バルモンドによる著作である。同書では、建築家のレム・コールハース、ダニエル・リベスキンド、アルヴァロ・シザらと協働によるいくつかのプロジェクトを軸に、構造や幾何学、カオス理論、さらには自身の思想などを通じて、建築における「インフォーマル」について解説していく。「インフォーマル」とは、「フォーマル」をグリッドに縛られた、形式的で階層的、固定的な秩序をもったものとするのに対して、デザインの隣接性が予測不可能なプロセスをもつものの特徴として位置づけられる。バルモンドは、「インフォーマル」には「ローカル」「ハイブリッド」「重ね合わせ」の三つの主な特性があると述べ、これらの必要十分を満たすためのいくつかのコンセプトや条件を挙げている。これまでの「フォーマル」の建築ではなく、テーマ、初期条件の状態を探求し、ダイナミックで自由な均衡の共存の状態をデザインへとフィードバックしながら独自の秩序を創出すること。そこから生まれる流動的な空間の創造を導く考え方は、社会の変化ではなく、新しい数学的な思考によって導かれ、建築の概念を新たなパラダイムへと押し進めるものだ。

著者

補足情報

参考文献

『インフォーマル』,セシル・バルモンド(金田充弘監修、山形浩生訳),TOTO出版,2005
『10+1』No.33,「部分的/離散的 ヨコミゾマコトと藤本壮介の建築」,ヨコミゾマコト、藤本壮介、今井公太郎、今村創平、日埜直彦、吉村靖孝,INAX出版,2003
『a+u』2004年5月号,「流動的な空間について」,新建築社
『新建築』2002年1月号,新建築社