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引用

Quotation
更新日
2024年03月11日

「引用」とは、広義には論文などを執筆の際、他の書物などから事例や言葉を引くことで私見の説得力や信憑性を高めるために用いられる方法である。美術における引用は、まず「コラージュ」や「アッサンブラージュ」などの技法が、「引用の技法」として捉えられている。また、絵画作品においてはモチーフのポーズや構図の引用というものが見られる。19世紀フランスの画家、エドゥアール・マネは《草上の昼食》(1863)において、ラファエロ・サンティの《パリスの審判》(焼失のためマネが参照したのはマーカントニオ・ライモンディによる版画である)から登場人物のポーズを引用している。《草上の昼食》を巡るさまざまな解釈についてここでは触れないが、いわゆる巨匠の作品からの引用によってパロディとしたのではないか、また自らの作品の評価を高めることを狙ったのではないかなどと推測されている。マネ作品における事例のほかにも、当時のアカデミー画家の作品においても過去の巨匠による作品からの引用は頻繁に行なわれていた。また、美術における引用は、しばしば剽窃、盗用との境界線について議論を巻き起こす契機となる。なお、日本では70年代に、批評家の宮川淳による『引用の織物』(筑摩書房、1975)をきっかけにして、80年代から始まるシミュレーショニズムやアプロプリエーションの手法を先取りするかたちで問題化された。

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参考文献

『引用の織物』,宮川淳,筑摩書房,1975