イヴェント
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- 更新日
- 2024年03月11日
ジョージ・ブレクトが命名した「イヴェント・スコア」を嚆矢として、G・マチューナスらが活動したフルクサスを母体として発展した。直訳すると「事件」や「出来事」となるが、台本が用意されたA・カプローの初期のハプニングとは異なり、偶然性を重視し、その演劇性は弱められている。しばしば指示書の役割を持つテキストに従ってある動作(task)を遂行することにより、その場所で起こる一回的な出来事の総体を作品化する点を特徴とする。例えばブレクトのイヴェントでは、息をすること、椅子に座ること、煙草を吸うことなども作品の要素となった。イヴェントの系譜としては、チューリヒ・ダダによるキャバレー・ヴォルテールでの一連の活動などが挙げられるが、それ以上にイヴェント概念の形成に貢献したのは、フルクサスに参加した多くのアメリカ人アーティストや作曲家がその影響下にあった作曲家、J・ケージの存在である。50年代後半にケージが推進した偶然性の導入や、作曲と聴取の差異を廃棄した音楽への志向は、当時ケージの教えを受けていたブレクトやカプローらにも浸透し、美術へと転用された。またケージ自身が52年にブラック・マウンテン・カレッジで行なった《シアター・ピース#1》はその祖形に位置づけられるものであり、こちらも「イヴェント」と呼ばれることがある。
補足情報
参考文献
George Brecht: events: eine Heterospektive = a heterospective,Julia Robinson,W. König,2005
John Cage(October files 12),edited by Julia Robinson,MIT Press,2011
参考資料
《シアター・ピース#1》,ジョン・ケージ,1952