エステティック運動
- The Aesthetic Movement
- 更新日
- 2024年03月11日
唯美主義運動と訳される。19世紀後期のイギリスを中心に興った、装飾芸術・ファッション・インテリアなど広い範囲に渡る、大衆の「美」の享受・消費をめぐる流行現象。「唯美主義(耽美主義、芸術至上主義ともいう)」とは、文学や絵画の芸術(ハイ・アート)領域で、芸術が美の追求以外には何も必要としないとする芸術至上主義の立場、また美的な体験に人生の最大目的を置く立場を指す。イギリスでは、ウォルター・ペイターやオスカー・ワイルドの著作がこの代表である。一方、美の創造・享受に価値を見出す唯美主義的思想は、「生活の芸術化」を目指すことにもなる。「唯美主義運動」とは、生活水準が上がった1870-80年代頃の中産階級を主体とする、受け手(消費者)側の動向である。豊かになった中産階級たちは、モリス商会でサセックス・チェアなどの家具を、リバティ・デパートでアーツ・アンド・クラフツ運動のデザイナーの製品、日本の工芸品等を買い求めて自宅を飾り、ケイト・グリーナウェイ風のドレスやワイルドが好んで着たようなビロードのジャケットに半ズボンの「唯美主義的ファッション」で身を包んだ。デュ・モーリエの風刺漫画は、唯美主義者の熱狂ぶり(唯美主義者の象徴である向日葵や孔雀の羽が描きこまれている)を伝えている。80年代も末になると、唯美主義運動は収束に向かった。
補足情報
参考文献
『唯美主義運動』 ,ロビン・スペンサー(愛甲健児訳),パルコ出版局,1978
『唯美主義とジャパニズム』,谷田博幸,名古屋大学出版会,2004