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オブジェ

objet(仏)/object
更新日
2024年03月11日

もとは物、物体、対象、客体、対象、目的の意味。主体(sujet/subject)に対する客体。量産された既製品や自然物の断片といった本来芸術とは無関係の物体を、非実用的なただの「もの」として呈示するときにこの語が当てられる。物体そのものを指すと同時に、そうした物体を作品として呈示するという考え方や観念を含んだ呼称である。20世紀初頭のダダによる既存価値の破壊や無意味性追求のなかで生まれ、シュルレアリスムが盛んに利用した。物体に通常備わっている意味や目的、慣習的な用途、本来の機能を奪う(機能が保たれていてもそれ抜きに見せる)ことで「もの」としての存在を主張させ、作者の主観を排して深層心理に働きかけ得ると考えられたオブジェの観念は、シュルレアリスムにとってうってつけのモチーフであった(日本において仏語の呼び名が一般化しているのは、シュルレアリスム経由で定着したことを示している)。ダダ-シュルレアリスムを取り巻く流れのなかでとりわけオブジェの用法をラディカルに展開させたのがM・デュシャンで、「レディ・メイド」「ファウンド・オブジェクト」などの類概念も生んだ。オブジェの登場によって19 世紀以前の「絵画」「彫刻」のカテゴライズを基本とする芸術概念は変容・拡張せざるを得ず、従来の素材や技法は芸術の拠り所としての意義を大きく減退させた。なお60年代から70年代頃の日本では、オブジェの持つニュアンスを保ちながら「もの」という呼称の紛らわしさを避けるべく隠語風に「ブツ」と呼ばれることもあったが、定着しなかった。

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