音響詩
- Sound Poetry(英), Poésie sonore(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
最も広義には、他のどの側面よりも音が中心になっている詩。こうした詩は世界中で伝統的につくられていたが、前衛的な試みとして制作されだしたのは20世紀初頭である。さらに「音響詩(sound poetry/poésie sonore)」という用語がジャンルの名称として使われ始めたのは1950年代である。「音声詩」という訳もあり、また「phonetic poetry/poésie phonétique」「text-sound」などの名称も使われる。前衛としての音響詩は概して、言語を意味から解放することを目指した。こうした試みはロシア未来派のV・フレーブニコフやイタリア未来派のF・T・マリネッティによって開始され、ダダイズム、デ・ステイルに受け継がれていく。第二次大戦後のフランスではI・イズーらレトリストが語を形成しない文字の連続による詩作を試み、またA・アルトーの《神の裁きと訣別するため》(1947)が物議を醸した。50年代に至ると、H・ショパン、B・エドシック、F・デュフレーヌらにより音響詩は新たな展開を見せる。前衛としての音響詩が活字を利用したのに対し、彼らはエレクトロニクスによる声の変形に取り組み、また意味の復権を試みた。同時期にB・ガイシン、B・コビングらも現われ、音響詩の国際的ネットワークが形成されていく。なかでもフルクサスのD・ヒギンズは伝統的作品を含む音響詩の分類を試みている。90年代に入ると過去の音源のCD化、および視覚詩・具体詩・音響詩のリポジトリ(データベース)として96年に始まったUbuwebなどにより、以前と比較して格段に過去の作品に接しやすくなった。
補足情報
参考文献
『言葉のアヴァンギャルド ダダと未来派の20世紀』,塚原史,講談社,1994
『ダダ・シュルレアリスムの時代』,塚原史,筑摩書房,2003
『蘇るフレーブニコフ』,亀山郁夫,平凡社,1989
『インターメディアの詩学』,ディック・ヒギンズ(岩佐鉄男訳),国書刊行会,1988
『現代音楽を読み解く88のキーワード 12音技法からミクスト作品まで』,ジャン=イヴ・ボスール(栗原詩子訳),音楽之友社,2008