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オープン・ビルディング

Open Building
更新日
2024年03月11日

オープン・ビルディングとは、1960年代にニコラス・ジョン・ハブラーケンによって提唱された理論および概念であり、建物の建設・利用の一連のプロセスを、「サポート」と「インフィル」に分けて考えることを提案するものである。ここでいう「サポート」とは、その建物の利用者全体によって意思決定されるべき部分を指し、また「インフィル」とは、特定の利用者のみが自由に意思決定できる部分を指す。ハブラーケンによるオープン・ビルディング理論は、均質な住戸が大量に並ぶ、当時の集合住宅計画への批判に端を発するものであり、集合住宅における住戸部分をインフィルと位置付け、そこに居住者一人ひとりの意思を反映させることによって、集合住宅計画に人間性を回復させ、また周辺環境との調和をもたらそうとするものであった。ハブラーケンによる方法論は、集合住宅計画への居住者参加の実践的な方法論として各国で受け入れられた。
オープン・ビルディング理論において、サポートとインフィルの間にはレヴェルと呼ばれる階層構造の存在が想定されている。ここで、サポートはインフィルの上位のレヴェルに属し、下位のレヴェルに属するインフィルに関する決定は、サポートに影響を及ぼさないことが重要であるとハブラーケンは主張した。その後、アムステルダムの都市構成分析などを通じて、サポートのさらに上位のレヴェルとして、都市組織を意味する「アーバン・ティッシュ」の概念が提唱されている。オープン・ビルディング理論は、1970年代初頭には日本にも紹介され、内田祥哉によるシステムズ・ビルディング理論や、巽和夫による公共化住宅論などとともに、集合住宅のビルディング・システムをスケルトン(構造躯体・共用設備など)とインフィル(内装・住戸内設備など)に分離するSI(スケルトン・インフィル)住宅のコンセプトの源流をなすこととなる。

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参考文献

Housing for the Millions: John Habraken and the SAR(1960-2000),Dorine van hoogstraten,Martijn Vos,Koos Bosma,John Habraken,NAi Publishers,2001
『「住宅」という考え方 20世紀的住宅の系譜』,松村秀一,東京大学出版会,1999