カット・アウト
- Cut-Out
- 更新日
- 2024年03月11日
ジャクソン・ポロックがオールオーヴァーの絵画を手がけたのとほぼ同時期の1948年から50年にかけて制作された、支持体の一部を切り抜いた作品シリーズのこと。大原美術館所蔵の《カット・アウト》(1948-58頃)をはじめ、《アウト・オブ・ザ・ウェブ:ナンバー7、1949》(1949)など計6点が存在する。カット・アウトには「ポーリング」の技法で画面を絵具で埋め尽くした後に有機的形象を切り抜き、裏張りをマウントしたものと、反対に絵画から形象を切り抜き、その部分を別の支持体に添付した2種のヴァージョンがある。シリーズの代表作である《カット・アウト》では、明らかに人型を示唆する形象が切り抜かれているが、具象的な手掛かりがほぼ喪失されたとされるオールオーヴァー・ペインティングと同時期にカット・アウトが制作されたことは、この時期にあっても形象性を復活させるための何らかの方法が模索されていたことが推測される。一方で批評家M・フリードは、《アウト・オブ・ザ・ウェブ:ナンバー7、1949》を分析した際、この切り抜かれた部分はポロックの絵画の抽象的な視覚性を損なうものではなく、むしろ視覚的な「盲点(blind spot)」として機能すると説いた。
補足情報
参考文献
芸術/批評』0号,「ジャクソン・ポロックの《カット・アウト》-その年代確定と作者同定をめぐる一考察」,大島徹也,東信堂,2003
Art and Objecthood: Essays and Reviews,“Three American Painters,Noland,Olitski,Stella”
注・備考
※1915年にマン・レイもキャンバスの一部を切り抜いた《カット・アウト》を制作している。