カットアップ
- Cut-up
- 更新日
- 2024年03月11日
ある一定の流れをもった作品を寸断し、まったく別の流れをそこに接続すること。文学においてはダダに起源をもち、その後フリオ・コルタサルやウィリアム・S・バロウズらによって用いられた20世紀以降の技法として知られる。文学におけるカットアップは、タイプライターで印刷された文字列をいちど断片化した後に再構成するという「分解」と「結合」にその本質がある。他方、音楽においては、ある音源から一部のフレーズのみを再録音し、しかるべき加工を施した後にそれを新たな楽曲へと組み込むことがカットアップに相当するが、音楽においてこうした作業は一般に「サンプリング」と呼ばれることが多い。また文学とは異なり、音楽制作においてサンプリングされたフレーズはしばしばある楽曲の構成要素として反復的に用いられるため、文学における一回的な「分解」と「結合」には必ずしも一致しないという側面もある。現代美術におけるカットアップには上記の文学と音楽双方からの影響が看取されるが、基本的にカットアップとは(その名が示すとおり)「寸断」という方法ないし美学である。したがって美術作品の場合、コラージュ作品、とりわけ異質な要素どうしの結合が、上記のような意味内容をもつカットアップに相当するものであると言うことができる。
補足情報
参考文献
『裸のランチ』,ウィリアム・バロウズ(鮎川信夫訳),河出文庫,2003
『増補 シミュレーショニズム』,椹木野衣,ちくま学芸文庫,2001