キアロスクーロ
- Chiaroscuro(伊)
- 更新日
- 2024年03月11日
イタリア語で「明暗」を指す単語であるが、美術においては描画にあたって対象物の形態を観察し、光から明部と暗部の対比関係やその変化をとらえて立体感を表わしたり、画面構成上の劇的効果を狙って用いる技法。もともとは着彩紙に白や暗い色を用いて描くデッサンをキアロスクーロ素描と呼んでいたが、15世紀初期からイタリアやフランドルで油絵の三次元表現のための明暗法として広まった。17世紀になるとバロック芸術の絵画において、キアロスクーロが画面全体に用いられることにより躍動感溢れる物語性を表現した作品が見られるようになる。立体感を出す場合には、モチーフに部分的にやや明るい色彩とやや暗い色彩を漸次的にのせて陰影を表現する。また構成上の劇的効果を高める場合には、画面上のクローズアップしたいモチーフをスポットライトが当たっているかのように明るい色彩で描き、背景となる部分を黒に近い暗い色彩をのせて対比を際立たせることによって表現する。カラヴァッジオやジョルジュ・ド・ラ・トゥールなどの作品では地上の人物を暗部に、天上人を強烈な一筋の光で照らすことによって画面に神聖な緊張感をもたらすことに成功している。また、16世紀初めにドイツで発明されたキアロスクーロ版画というものもあり、これは1枚の図像のために明暗2色以上の原版をつくり重ね合わせて立体的な調子を深めた木版画のことである。
補足情報
参考文献
「キアロスクーロ ルネサンスとバロックの多色木版画」展カタログ,国立西洋美術館,2005