九室会
- Kyu-shitsu Kai
- 更新日
- 2024年03月11日
昭和戦前期、二科会の内部に設けられた前衛的な絵画の研究団体。二科会では1933年の第20回展より抽象的・シュルレアリスム的な傾向の作品を一室に集めていた。それを踏まえ、38年9月に、峰岸義一、吉原治良、山本敬輔、山口長男、広幡憲、高橋迪章が、「二科会九室関係諸氏ノ親睦及研究ヲ目的トシテ」組織することを呼びかけ、同年10月に新宿中村屋で正式に結成された。創立会員は、上記6名の発起人に加え、斉藤義重、桂ユキ子(桂ゆき)、難波架空像(難波香久三)等の29名であった。顧問には二科会の東郷青児と藤田嗣治が名前を連ねている。その後メンバーの加入や脱退もあったが、40年の最盛期には45名を数えた。独自の展覧会活動としては、39年5月に日本橋白木屋で第1回展、1940年3月に銀座三越で第2回展、1941年9月に銀座三越で「航空美術展」、1943年5月に日本楽器画廊で第3回展を開催し、これが最後の活動となった。第1回展と第2回展は大阪にも巡回している。また九室会は機関誌『九室』を39年5月と1940年3月の2号だけ刊行している。出品内容に関しては、目録があっても現存する作品が少なく、そのすべてを明らかにすることはできない。吉原や山口らによる、時局を直接表現することから離れた抽象的・シュルレアリスム的な作品も多いが、難波らによる時局を直接反映した作品も目立つ。また「航空美術展」では、松本竣介が《航空兵群像》(1941)を出品していた。会員間には共通する理念もなく、団体としては短命であったが、戦後美術を代表する多くの画家が一時的に結集し、戦時下における前衛表現の多彩なあり方を示していた。
補足情報
参考文献
「日本の抽象絵画1910-1945」展カタログ,板橋区立美術館ほか編,読売新聞社,1992
『昭和期美術展覧会出品目録 戦前編』,東京文化財研究所編,中央公論美術出版,2006
「日本のシュールリアリスム1925-1945」展カタログ,名古屋市美術館編,名古屋市美術館,1990