組写真
- Kumi Shashin
- 更新日
- 2024年03月11日
複数の写真を用い、その組み合わせ方によってメッセージを伝えようとする提示の仕方のこと。広義には、媒体掲載や展示の際に、2枚以上の写真を組み合わせて見せるもののすべてが組写真であると言えるが、狭義には、『LIFE』などのグラフ雑誌が用いた「フォト・エッセイ」と呼ばれる形式のことを指す。これは写真を単なる一枚絵の挿図として用いるのではなく、複数の写真をレイアウトし、それを補完するタイトルやリード文、キャプションなどの文字要素を組み合わせることによって、ひとつのストーリーを仕立てていくものである。日本ではドイツのグラフ雑誌『ベルリーナ・イルストリールテ・ツァイツング』で経験を積んで帰国した名取洋之助が1933年に日本工房を立ち上げ、報道写真の制作における実践的な方法論として、組写真の考え方を浸透させようと努めた。しかし、やがて名取の後続世代からは、より自由な形式の組写真に対する探究が生まれていく。例えば東松照明は、名取のようにあらかじめ設定した明確なストーリーを説明するために写真を使うのではなく、写真同士の組み合わせから生まれる相乗効果によって、写真のもつ意味が増幅していくという組写真のあり方を模索し、自身のアプローチを説明するために「群写真」という呼び名を用いた。そうした新しい組写真のあり方は、現在ではもはや当たり前のものとして受けとめられているが、一枚写真が当たり前であった芸術写真の時代から、報道写真の隆盛期を経て、現代に至るまでの経緯を振り返ると、写真表現の変容につれて、組写真のヴァリエーションにも拡張がもたらされてきたことがわかる。
補足情報
参考文献
『組写真の作り方』,名取洋之助,慶友社,1956
『組写真をどうつくるか』,田中雅夫,ダヴィッド社,1969
『アサヒカメラ教室3』,「組写真から群写真へ」,東松照明,朝日新聞社,1970
『私の組写真作法』,中村由信,朝日ソノラマ,1977