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クリティカル・リージョナリズム

Critical Regionalism
更新日
2024年03月11日

アレクサンダー・ツォニス+リアンヌ・ルフェーヴルによる「批判的地域主義」の語法と、同じ語で訳されているものの内容は「批評上の地域主義」ともいうべきケネス・フランプトンの語法がある。フランプトン「批判的地域主義にむけて」(ハル・フォスター編『反美学』1983年所収)は、ポスト・モダン建築においてマスメディア、記号的操作あるいは視覚を通じて、前衛が大衆資本主義に吸収されたと告発する。代わって土着の素材や技術による実践あるいは触覚を重んじる後衛主義を称揚しつつ、しかしノスタルジックな保守的地域主義とも距離を置く。その後も彼は、普遍的な文明と集団的ながら個別的で場所に根ざした文化との、その都度ごとの弁証法的統合を主張し、世界各地の諸実践を糾合する批評概念としてこの語を使った。一方、ツォニス+ルフェーヴルの81年の論文「グリッドと通行路」では、場所の喪失への意識を覚醒させるような、地域へのカント的「批判」、吟味をこの語で名指した。ついで彼らは、フランプトンが好むようなグローバリズムに抵抗可能な「地域」像そのものが、マーケティングに回収されることを懸念した。そこで都市の工業地域など連帯や抵抗が不可能な非-場所、場所なき場所の「ダーティ・リアリズム」に着目した。フランプトンも90年代から、構造力学、風土への対応、心理的効果などを総合した「テクトニック」概念の下で各地の実践を拾うようになった。しかしガヤトリ・スピヴァクとジュディス・バトラーの2007年の共著『国歌を歌うのは誰か?』など、文化科学や政治学でこの概念が援用されつつある。

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参考文献

『国家を歌うのは誰か? グローバル・ステイトにおける言語・政治・帰属』,ガヤトリ・スピヴァク、ジュディス・バトラー(竹村和子訳),岩波書店,2008
『終わりの建築/始まりの建築 ポスト・ラディカリズムの建築と言説』,五十嵐太郎,INAX出版,2001
『反美学 ポストモダンの諸相』,ハル・フォスター(室井尚、 吉岡洋訳),勁草書房,1987
『建築の20世紀 終わりから始まりへ』,「インターナショナリズムvs.リージョナリズム」,八束はじめ,デルファイ研究所,1998
『10+1』No.18,「批判的地域主義再考 コンテクスチュアリズム・反前衛・リアリズム」,五十嵐太郎,INAX出版,1999