グリッド
- Grid
- 更新日
- 2024年03月11日
格子のこと。近代絵画の多くの作品に格子状の形態や描写を取り入れた作品が見られるため、アヴァンギャルド芸術の特権的な指標としても扱われる。キュビスムが「切り子面」と呼ばれる格子状の小さな面の切断作用によって対象や空間を表出したことをはじめとして、樹木を無数の十字模様に解体する作業を推し進め、幾何学的な格子状の線によって平面を分割する絵画を制作したモンドリアン、矩形のキャンヴァスの中心に黒や白の四角形を描くマレーヴィチなど、近代絵画の大家の多くがなんらかのグリッド的作用を採用した。C・グリーンバーグはB・ニューマンの絵画の幾何学性を、絵画の矩形を描写のレヴェルにおいて反映するものであると分析したが、その意味でグリッドもまた、キャンヴァスの物理的な限定された表面の上に折り返される還元主義的な傾向を持つ。幾何学性、平面性、非再現性、反自然、抽象性などの近代的な絵画原理に訴えかけるグリッドについて、R・E・クラウスは「グリッド(Grids)」(1979)や「アヴァンギャルドのオリジナリティ」(1981)などの論文で、その模倣作用の排除による非再現表象性に注目し、それが美術作品の根源的な自律性や美学的純粋性を支えるものであると同時に、ほとんどの場合、画面内で複数化され、反復的に用いられるというパラドキシカルな性質に注目している。そのため、グリッドは「オリジナリティ」と「反復」という一見背反する二つの作用を併存させるものと見なされるのである。
補足情報
参考文献
『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』,ロザリンド・E・クラウス(小西信之訳),リブロポート,1994