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後期資本主義

Late Capitalism
更新日
2024年03月11日

「初期」「盛期」に続く「後期」の資本主義。「晩期資本主義」とも呼ばれる。20世紀初頭にマルクス主義者たちが用いはじめた「Spätkapitalismus」の訳語であり、現在では二度の世界大戦を経た1950年代以降の資本主義を指すことが多い。T・アドルノ、J・ハーバーマス、F・ジェイムソンらフランクフルト学派やマルクス主義の系譜に属する議論がとりわけ有名である。その定義は論者のあいだで一定のばらつきがあるが、資本主義を恒久不変の経済システムと捉えるのではなく、歴史的な視点に立って、その動的な変化に注目しようとする点では共通している。より具体的に敷衍するなら、資本の投下によって利潤や剰余価値を得る経済システムとしての資本主義は、生産様式が変化するにつれてその内実をも変化させる、という認識が「後期資本主義」をめぐる議論の共通の地平をなしている。こうした考え方は、70年代にE・マンデルがドイツ語で発表した『後期資本主義』(1972)を嚆矢とするが、これを広義の批評理論へと本格的に導入したのはジェイムソンの大著『ポストモダニズム、あるいは後期資本主義の文化理論』(1991)である。同書のなかでジェイムソンは、マンデルの「後期資本主義」という言葉を「多国籍的(multinational)資本主義」や「ポストモダニズム」とある程度まで重ね合わせつつ、ウォーホルやナム・ジュン・パイクの美術作品、ル・コルビュジエやフランク・ゲーリーの建築作品などを論じている。

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参考文献

『晩期資本主義における正統化の諸問題』,J・ハバーマス(細谷貞雄訳),岩波書店,1979
『後期資本主義』,エルネスト・マンデル(飯田裕康、的場昭弘、山本啓訳),柘植書房,1980-81
Postmodernism,or,The Cultural Logic of Late Capitalism,Frederic Jameson,Duke University Press,1991