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コンパクト・シティ

Compact City
更新日
2024年03月11日

都市の諸機能を近接配置することで、郊外への無秩序な拡散や都市中心部の衰退などの問題の解決を図ろうとする考え方である。そもそも「コンパクト・シティ」という言葉が最初に取り上げられたのは、米国のオペレーションズ・リサーチの専門家であるG・B・ダンツィクとT・L・サアティによる『コンパクトシティ』(1970)であるとされ、そこでは人や荷物、廃棄物などの効率的な輸送システムをもった巨大構造物のような理想主義的都市が構想されている。その後、都市政策として包括的な議論を展開したのはM・ジェンクス、E・バートン、K・ウィリアムらであり、持続可能性の観点からイギリスとオーストラリアの事例について考察を加えている。日本においては、海道清信が欧米における理論の紹介や日本への展開可能性を検討して以降活発な議論がなされ、LRT(ライトレール)導入により公共交通の拡充を進める富山市や郊外開発の抑制と中心市街地の再生を目指す青森市など、具体的な都市政策を展開している自治体も多い。ただし、一口に「コンパクト・シティ」といっても、大都市と地方都市ではその位置づけが大きく異なるうえ、土地利用から交通、エネルギー、防災まで広範な分野にまたがる内容を含んでおり、「コンパクト・シティ」は、単一のヴィジョンというよりは都市再生のためのひとつのキーワードと捉えたほうがわかりやすい。一方で、広大な郊外を有する日本の都市をどうコンパクト・シティに導くかといった実現性の問題や、郊外や農村の環境悪化に関する懸念など、解決すべき課題も多く残されている。

補足情報

参考文献

『コンパクトシティ 持続可能な都市形態を求めて』,マイク・ジェンクス,エリザベス・バートン,カティ・ウイリアムス編著(神戸市コンパクトシティ研究会、こうべまちづくりセンター訳),阪神大震災復興まちづくり支援ネットワーク,2000
『コンパクトシティ 持続可能な社会の都市像を求めて』,海道清信,学芸出版社,2001
『10+1』 No.31,特集=コンパクトシティ・スタディ,INAX出版,2003
『日本版コンパクトシティ 地域循環型都市の構築』,鈴木浩,学陽書房,2007
『コンパクトシティ再考 理論的検証から都市像の探求へ』,鈴木勉,学芸出版社,2008