コンピュータ・アート
- Computer Art
- 更新日
- 2024年03月11日
現在のメディア・アートやデジタル・アートに繋がる制作過程にコンピュータを使用した作品およびその方法。当初コンピュータを用いて作品をつくることは、プログラムをつくることと同義であり、作品の「美」を構成するアルゴリズムを考えることにほかならなかった。それは人間の創造過程を解明しコンピュータに置き換えるというある意味AI(人工知能)的な哲学を伴って始まり、C・シャノンの情報理論をふまえたM・ベンゼの「情報美学」に帰結する。この系譜から、詩やテキストの領域のN・バレストリーニ、音楽のL・ヒラー&L・アイザックソン、グラフィックのK・ツーゼ、G・ネース、F・ナーケなどコンピュータ・アートのパイオニアたちが誕生した。この時期(1950年代-60年代)の作品は、(1)例えば作曲の和音結合などの基本ルールをプログラムするモデルと、(2)遷移確率やモンテカル法による「確率モデル」に大別できる。また、過去の名作の構成要素をデータとしたヴァリエーション展開も試みられた。1968年の「サイバネティック・セレンディピティ」(ICA、ロンドン)は初期コンピュータ・アートを総括する展覧会となったが、70年代以降のハードウェアとパッケージソフトの普及は、コンピュータを単なるCG制作ツールに陥れる原因ともなった。昨今のオープンソースの潮流はProcessingやopenFreamworksなどの簡便かつ高機能なプログラミング環境を提供し、フィジカル・コンピューティングとも相まって初期コンピュータ・アートの多様性とアルゴリズムの再評価にも繋がっている。
補足情報
参考文献
『情報美学入門』,マックス・ベンゼ(草深幸司訳),勁草書房,1997
『情報・コンピュータ・芸術』,ジョン・R・ピアース(白井良明訳),ダイヤモンド社,1969
『コンピュータと美学』,川野洋,東京大学出版会,1984
The Computer in Art,Jasia Reichardt,ed.,Studio Vista,1971
Computer Graphics – Computer Art,Herbert W. Franke,Springer,1971