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色相対比

Contrast of Hue
更新日
2024年03月11日

異なる色相の色を並べたり、時間を置いて見たときに、色相の差がより大きく感じられる現象のこと。例えば、黄色の地色の上に橙が重ねられている場合と、赤の地色に橙が重ねられている場合では、同じ橙でありながら、前者は少し赤みがあるように見え、後者は少し黄みに寄って見える。また、黄の地色の上に紫が重ねられている場合と、緑の地色の上に紫が重ねられている場合では、前者では紫みが強く感じられ、後者は赤みを増して見える。ヨハネス・イッテンは著書『色彩の芸術』のなかで、中世の教会に使われたステンドグラスからモンドリアンの絵画までを例に挙げたうえで、色相対比には「少なくとも三色の明瞭に区別された色相が必要である」こと、「その効果はつねに活発で力強くしかも決定的である」こと、その強さは「用いられる色が三原色から遠ざかるほど減少してゆく」ことが記されている。色相対比は美術だけでなく、化(科)学や心理学といった研究者であるゲーテ、ベーツォルト、シュヴルール、ヘルツェルらによって研究が重なられてきたことも興味深い。近年では医学・生理学的見地から研究も進められており、色相対比のメカニズムが人間の目の構造との関係で分析されている。

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参考文献

『よくわかる色彩用語ハンドブック 第2版』,内田洋子、宇田川千英子(小町谷朝生監修),早稲田教育出版,2005
『色彩の芸術 色彩の主観的経験と客観的原理』,ヨハネス・イッテン(大智浩、手塚又四郎訳),美術出版社,1964
『徹底図解 色のしくみ』,城一夫,新星出版社,2009
『色彩学概説』,千々岩英彰,東京大学出版会,2001
『色彩科学事典』,日本色彩学会,朝倉書店,1991