Artwords®

社会主義リアリズム

Социалистический реализм(露), Socialist Realism(英)
更新日
2024年03月11日

社会主義国で公式とされた芸術様式。ソヴィエト連邦において「革命的発展」に寄与する唯一の芸術様式として1934年に公式化され、他の社会主義国ならびに非社会主義国内の一部にも影響を与えた。スターリンが絶対的権力を掌握した後に開かれた第1回ソヴィエト作家総同盟会議(1934)で、ゴーリキーらにより「社会主義リアリズムは階級闘争の機関」と位置づけられた。その際、「現実を『革命的発展』において」、「われわれの英雄」を示し、必然的に実現する「われわれの未来」を捉えるように書かなければならないと理論化され、その文学的方法論が他の芸術ジャンルにも体系的に導入された。20年代から、トロツキーの芸術家への援助も含んだ国家介入の提言や教育人民委員(29年まで)ルナチャルスキーによる芸術論も社会主義リアリズムを準備したといえるが、20年代後半になるまではロシア・アヴァンギャルドを含め、美学的多様性が容認されていた。しかし、最終的には「労働者に関連した題材を労働者に理解できるよう写実的に表現して党の目的を支持する」社会主義リアリズムのみが公認芸術とされ、前衛芸術は形式主義的なものとして弾圧の対象となり、80年代末まで国内で日の目を見ることはなかった。社会主義リアリズムの代表的な美術作品はV・ムーヒナの彫刻《労働者とコルホーズの女性》(1937)、B・ウラジミルスキーの絵画《スターリンに花束を》(1949)などであるが、忘れてならないのは圧倒的な数のプロパガンダ・ポスター(例えばN・コチェルギンやK・ゾトフなど)である。他の社会主義国への影響に関していえば、例えば50年代に同手法を公式化した中国では「形式においては民族的、内容においては社会主義的」というスターリンのテーゼと一致するかたちでソ連型リアリズムに中国民間芸術を融合させた。社会主義リアリズム衰退後、その批判的表現である旧ソ連のソッツ・アートや中国のポリティカル・ポップが注目されたが、他の旧社会主義国においても同様の芸術傾向が生まれた。また、旧東ドイツにおいて社会主義リアリズムの美術教育を受けた作家ら(G・リヒターや新ライプツィッヒ派)が後に高い評価を得るなど、負の遺産としてのみ捉えられない側面もある。

著者

補足情報

参考文献

『スターリンと芸術家たち』,ボリス・ワジモヴィチ・ソコロフ(齋藤紘一訳),鳥影社,2007
『革命とは何であったか ロシアの芸術と社会1990-1937年』,デイビィッド・エリオット(海野弘訳),岩波書店,1992
『マルクス主義芸術論』,ルナチャールスキイ(昇曙夢訳),社会書房,1947
『新芸術論システム7 プロレタリア絵画論』,永田一脩,ゆまに書房,1991(原著:1930)
『アヴァン・チャイナ 中国の現代アート』,牧陽一,木魂社,1998