『写真小史』ヴァルター・ベンヤミン
- Kleine Geschichte der Photographie(独), Walter Benjamin
- 更新日
- 2024年03月11日
1931年に発表された、ヴァルター・ベンヤミンによる論考。本論は文字通り写真についての「小史」をなしており、カメラ・オブスクーラの技術がニエプスやダゲールらの発明や開発によって、像が定着されるところから記述が開始される。とはいえ、この論考は、写真史以外の文脈においても重要な問題が提起されている。その代表的なものは、「視覚的無意識」という概念である。そこでは、人間の目ではなく、カメラという機械によって捉えられたイメージには、人間の知覚が抑圧する「無意識」が写りこむと主張される。後に書かれることになる「複製技術時代の芸術作品」で展開される「アウラ」という概念も、本論に登場する。そのような写真メディアの特性に対応した写真家として、ウジェーヌ・アジェ、アウグスト・ザンダー、ジュルメール・クルル、カール・ブロスフェルトらが取り上げられることになる。
補足情報
参考文献
『図説 写真小史』,ヴァルター・ベンヤミン(久保哲司編訳),ちくま学芸文庫,1998
『痕跡の光学 ヴァルター・ベンヤミンの「視覚的無意識」について』,前川修,晃洋書房,2004