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『写真よさようなら』森山大道

Farewell Photography, Daido Moriyama
更新日
2024年03月11日

1972年に出版された森山大道の写真集。「アレ・ブレ・ボケ」写真の極致とも言うべきものであり、何が写っているのか、あるいは何を写そうとしたのかほとんど判別がつかない写真ばかりが収録されている。『プロヴォーク』解散後も「アレ・ブレ・ボケ」路線をひた走り、「写真とは何か」という思考の果てに自己解体へと至った森山の金字塔的写真集である。街にあふれるポスターや映画、TV画像といったものの複写も多く、現実とその表象を「等価」に捉えようとする森山の姿勢が表われている。また、暗室に残された他人のネガの切れ端を引き延ばしたものや、フィルムの巻き上げ(空おとし)の際に偶然写り込んだもの、ほとんど現像ムラのようなものまで収録していることも特徴的である。巻末には『プロヴォーク』同人であり、ライバルでもあった中平卓馬との対談が収録されている。本書は中平が提示した「植物図鑑」としての写真への森山からの応答のようにも見える。『プロヴォーク』のラディカリズムを極限まで推し進めた森山は、その後長いスランプに陥ることになる。

著者

補足情報

参考文献

『なぜ未だ「プロヴォーク」か 森山大道、中平卓馬、荒木経惟の登場』,西井一夫,青弓社,1996
『日々是写真』,清水穣,現代思潮社,2009
『犬の記憶』,森山大道,朝日新聞社,1984
『写真よさようなら』,森山大道,写真評論社,1972
『写真よさようなら』(新装版、対談は不掲載),森山大道,パワーシャベル,2006