『週刊小河内』
- Weekly Ogouchi
- 更新日
- 2024年03月11日
1952年6月に東京都小河内村(ダムに水没して現在は奥多摩湖となる)への山村工作隊に参加した前衛美術会のメンバーが、山中でガリ版を使って発行した冊子。1号のみ発行。山村工作隊とは、1950年代前半に日本共産党が指導した武装闘争の一形態である。全国の山中に建設中のダムなどが米軍基地を支える発電エネルギーの元となると考えられたことから、山村工作隊が侵入して建設労働者を扇動し破壊活動を行なうことを目的とした。当時大学生など多くの若者が各地の山村工作隊に協力していた。前衛美術会では島田澄也、山下菊二、尾藤豊、入野達弥、勅使河原宏、桂川寛の6人が小河内村のダム建設現場付近の洞窟などでキャンプ生活をし、約2カ月間の文化工作を行なった。同会の箕田源二郎や中山正らも臨時に参加して手伝った。この活動の成果は現実には皆無であった。だが、桂川はその経験を油彩画《小河内村》(1952)に仕上げ、岡本太郎からの批判もあったが、ルポルタージュ絵画の方向性を示そうとした。山下は翌年に山梨県曙村(現・南巨摩郡身延町)の山中を訪れて貧農の労働争議で起きた怪死事件を取材し、それが代表作《あけぼの村物語》(1953)の制作へとつながった。
補足情報
参考文献
『廃墟の前衛 回想の戦後美術』,桂川寛,一葉社,2004
『蒼き昭和時代 山村工作隊 顛末記』,島田澄也,ウエルスプリング(電子書籍),2011