Artwords®

シュルレアリスム

Surréalisme(仏)
更新日
2024年03月11日

超現実主義。フランスの詩人A・ブルトンによる1924年の著作『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』(「シュルレアリスム第一宣言」)に始まる芸術運動。その影響力からすれば20世紀最大の潮流といえる。フロイトの精神分析理論に影響を受け、無意識の表面化、無意識と理性との一致を目指した。文学、美術、映画など多分野で展開し、社会革命を意図して一時は共産党にも参加した。関わった作家が多く作品も多様だが、大まかに分ければダリ、マグリット、初期のM・エルンストらの夢を思わせる作品群と、後期エルンスト、ミロらのオートマティスム(自動記述。この方法はフロイト自身も患者の無意識を診断する際に用いていた)の作品群の二つの傾向がある。時代は先んじるが、デ・キリコらが20世紀初頭に唱えていた「形而上絵画」もシュルレアリスムの内に含まれる。ナチスが台頭した30年代に多くのシュルレアリストがアメリカに亡命し、抽象表現主義を形成する土台を築いた。日本にもその影響は波及し、フランスに留学した福沢一郎や理論面における瀧口修造らのリードで大きな流行を見せた。なお自動筆記やフロッタージュをはじめとしてシュルレアリスムはじつに多様なテクニックを生んだが、無意識を作品として発露させるために表現内容よりも方法・手段の発案に多くを負っていたことは大きな特徴といえる。その状況は、「今まで人がしたことのないこと」を求めて数々の表現手法を編み出した具体美術協会にも敷衍されよう。

著者

補足情報

参考文献

『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』,アンドレ・ブルトン(巖谷國士訳),岩波文庫,1992
『シュルレアリスムとは何か』,アンドレ・ブルトン(秋山澄夫訳),思潮社,1994
『シュルレアリスムを読む』,塚原史,白水社,1998
『シュールレアリスム』,イヴォンヌ・デュプレシ(稲田三吉訳),白水社,1992
『シュルレアリスムの哲学』,フェルディナン・アルキエ(巖谷國士・内田洋訳),河出書房新社,1975
「日本のシュールレアリスム 1925-1945」展カタログ,名古屋市美術館,1990

参考資料

『百頭女』,M・エルンスト,1929
『アンダルシアの犬』,ルイス・ブニュエル,1928
《大家族》,R・マグリット,1963