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新音楽

Neue Musik(独)
更新日
2024年03月11日

1910年代から30年代頃までの同時代的な音楽を指すエポック概念。広義には20世紀の音楽全般に適用される。一般的な意味での「neue Musik(新しい音楽)」と区別して、大文字の「Neue Musik」と表記される。「新しい音楽」という意味での新音楽は固定されたタームとして定義しうるものではなく、歴史的な関係のなかでその都度定義される。だが、1890年頃から音楽史のうえで何らかの新しい兆しが生じようとしていたのは確かであり、やがてこうした動きはロマン主義への反動として顕在化する。調性や機能和声、合理的な拍節構造などの伝統的な規範からの逸脱が起き、「新音楽(Neue Musik)」というエポック概念が生まれた。それは音楽的な素材のみならず、現代音楽を支援する委嘱システムなど、音楽を取り巻く社会構造や制度にも及んだ。アドルノによれば、シェーンベルクら新ウィーン楽派の無調および12音技法は不安定な現実からの離反ではなく、その不協和な響きが社会のあり方を反映しているのである。同じ頃、「Fin de siècle(世紀末)」の頽廃と期待の最中にあったフランスでは、サティやピカソを中心に音楽、美術、文学、演劇、ダンスが一体となった舞台作品が生み出された。この種の舞台作品は後にD・ミヨー、A・オネゲルらによるフランス6人組にも引き継がれた。アメリカでは、旺盛な想像力と直観に基づく超越主義的な音楽観のもとでC・アイヴズが大規模な作品を書いた。1915年にフランスから移住したE・ヴァレーズもアメリカにおける新音楽の潮流に寄与した。ドイツ・オーストリア圏での新音楽があくまでも歴史的な連続性のなかでドイツ的な伝統を継承、刷新したのに対し、それ以外の地域ではドイツ的なるものとは一線を画す音楽が生まれた。バルトークやストラヴィンスキーらによる民謡やジャズの要素の導入も、その一端と見なすことができる。

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補足情報

参考文献

『新音楽の哲学』,テオドール・W・アドルノ(龍村あや子訳),音楽之友社,2007
『不協和音 管理社会における音楽』,テオドール・W・アドルノ(三光長治、高辻知義訳),平凡社,1998