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実験工房

Jikken-kobo
更新日
2024年03月11日

1951年から57年にかけて、瀧口修造を精神的リーダーに仰ぎ、美術家、作曲家、批評家、振付師、詩人などのメンバーが個別の活動をしながらも互いに協力してコンサートや展覧会で技術や作品を提供する時に用いたグループ名。武満徹、湯浅譲二、山口勝弘、駒井哲郎、北代省三、福島秀子、秋山邦晴ら14人のメンバーから成る。具体美術協会(54年結成)をはじめとする芸術団体による活動が隆盛する以前の51年9月に東京で発足した。同年11月16日にはピカソ展の関連イヴェントとして日比谷公会堂で創作バレエ『生きる悦び』を発表、これが実験工房の第1回発表会とされている。彼らの活動は多岐にわたり、発表会と呼ばれるイヴェントでのメンバーの演奏や舞台美術(舞台装置や写真、脚本、照明、振付けなど)の発表、アルノルト・シェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』やオリビエ・メシアンの『世の終わりのための四重奏曲』といった作品の日本への紹介(1952、1953)、電子音楽のオーディション(1956)、東京電信工業の依頼によるオートスライド装置の制作(1953)や松本俊夫が監督した日本自転車工業会の海外PR用の短編映像『銀輪』の撮影協力など、音楽、美術、文学、演劇の域を超えたインターメディアな活動が特徴である。メンバーが海外の芸術家との交流が深かったこともあり、欧米の前衛芸術の動きをいち早く日本に紹介したほか、新しいテクノロジーを自らの制作に取り入れようとする姿勢、アカデミズムを否定した自由で実験的な活動など、日本の戦後の前衛美術、現代音楽の黎明期を語るうえで重要なグループである。

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参考文献

『コレクション滝口修造7 実験工房・アンデパンダン』,滝口修造,みすず書房,1992
『実験工房と瀧口修造』,佐谷画廊,1991
「1953年、ライトアップ 新しい戦後美術像が見えて来た」展カタログ,目黒美術館,1996