生産芸術
- Производственное искусство(露), Productivism(英)
- 更新日
- 2024年03月11日
1917年のロシア革命に伴って生じた、芸術家の活動を作品制作から工業生産へと移行させようとする芸術の動向。「生産主義(productivism)」とも称される。19年に教育人民委員会のイゾ(造形芸術局)の芸術・生産部門の会議および国立芸術産業工房において芸術と生産をめぐる議論がはじめて浮上し、インフク(芸術文化研究所)ではさらに詳しく生産芸術の理念が検討された。20年に建築および造形芸術の総合的な専門学校ヴフテマス(高等芸術技術工房)が設立され、生産芸術の理念と実践が展開された。生産芸術の理論家としてはインフクやヴフテマスで活動していたオシップ・ブリーク、ボリス・アルヴァートフ、アレクセイ・ガン、セルゲイ・トレチャコフ、ニコライ・タラブーキン、ボリス・クシネル、ニコライ・チュジャークらが挙げられる。生産主義の批評家たちは、マルクスや文化団体プロレトクリト(プロレタリア文化啓蒙組織)の指導者アレクサンドル・ボグダーノフらの思想に影響され、手工業的なブルジョワの工業生産から、高度な技術を用いた集団的大量生産への移行を主張した。構成主義者たちによる、建築や家具、陶器などの工芸品、グラフィックや生地のデザインなど有用な事物の制作は生産主義理論と深い関係がある。
補足情報
参考文献
『ロシア・アヴァンギャルド4 コンストルクツィヤ 構成主義の展開』,五十殿利治、土肥美夫編,国書刊行会,1991
『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』,桑野隆,東京大学出版会,1996
『ロシア・アヴァンギャルド芸術 理論と批評 1902-34年』,J・E・ボウルト編(川端香男里訳),岩波書店,1988
『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』,河村彩,水声社,2014