セカイ系
- Sekai-kei, World-type
- 更新日
- 2024年03月11日
日本のマンガ、アニメ、ライトノベルなどの物語構造における特定の傾向を指す言葉。具体的には、若い男女の恋愛関係を典型とする狭小な人間関係が世界の危機や終末を左右するといった極端なファンタジーに基づく物語構造のこと。庵野秀明監督のアニメ作品『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-96)が一般的にその起源とされ、高橋しん『最終兵器彼女』(マンガ、2000-01)、秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』(ライトノベル、2001-03)、新海誠『ほしのこえ』(アニメ、2002)の三作品がその典型例とされる。元々はインターネット上で局所的に用いられていた揶揄的な言葉にすぎなかったが、2004年頃から東浩紀らが著作のなかで言及しはじめたことによってインターネット外の読者層にもある程度定着した。この呼称には、成熟した大人の社会関係(あるいは精神分析家のJ・ラカンが言うところの「象徴界」)を拒絶し、二者関係(「想像界」)とその彼方(「現実界」)を直結させるという未成熟な世界観が含意されている。それは「セカイ」という言葉のカナタナ表記にも暗に示されているが、中国語訳の「世界系」(中国語版ウィキペディア)や英訳の「world-type」(宮台真司による訳語)によって上記のようなニュアンスを伝えることにはしばしば困難が付きまとう。この事実は、そもそも「セカイ系」という言葉が日本の特殊な文化状況に深く依存したものであることを端的に裏付けているように思われる。また、この「セカイ系」という言葉は近年影を潜めているように思われるが、それは「セカイ系」に属する作品が減少したからではなく、東浩紀が指摘するように、むしろセカイ系の想像力が各ジャンルに拡散しつつあることの証左であると言えるだろう。
補足情報
参考文献
『セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史』,前島賢,ソフトバンク新書,2010
『社会は存在しない セカイ系文化論』,限界小説研究会編,南雲堂,2009
『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』,東浩紀,講談社現代新書,2007