セセッション式
- Secession-style
- 更新日
- 2024年03月11日
大正初期の工芸や染織に関する資料に散見される言葉で、セセッション(ウィーン分離派)の工芸作品を特徴づける幾何学的意匠や渦を巻く植物模様が見られる様式を意味する場合が多い。同様の様式を意味する言葉としては、ほかに「マルホフ式」というものもあり、これは、ウィーン工房の設立者であるホフマン(Joseff Hoffman)とその弟子マルゴールド(Emanuel J. Margold)の名前を組み合わせて建築家の武田五一が命名したものである。日本においてセセッションへの関心が高まりを見せるのは、正確には大正2(1913)年から4(1915)年にかけてのことで、この3年間で洪洋社から『セセッション図案集』全7巻が刊行されているほか、大正3(1914)年に開催された東京大正博覧会においてもセセッションの影響が顕著であったという。服飾もその例外ではなく、当時の三越や白木屋のPR誌では「セセッション式」「マルホフ式」の着物や帯が紹介されている。もっとも、そうした言葉で形容された例のなかには、具体的にどこの部分にセセッションの影響があるのか不明なものも含まれており、ひとつの側面として、斬新奇抜なものを「セセッション式」「マルホフ式」と形容することが流行していたことを指摘しておかなければならない。同様のことは、昭和初期において、アール・ヌーヴォーやアール・デコ風の着物の模様がしばしば「モダン」と形容された事例などについても指摘することができる。
補足情報
参考文献
『日本服飾学会誌』19号,「大正期の和服におけるセセッション式模様について」,原田純子,日本服飾学会,2000
『デザイン理論』57号,「武田五一と関西デザイン界」,宮島久雄,意匠学会,2011