Artwords®

先行デザイン

Pre-Existing Design
更新日
2024年03月11日

中谷礼仁が率いる「都市連鎖研究体」と宮本佳明が率いる「環境ノイズエレメント研究チーム」が協同し、提示した都市デザイン手法である。『10+1』No.37「特集=先行デザイン宣言──都市のかたち/生成の手法」において特集が組まれ、両者によるデザインプ・ロジェクトと併せて、「先行デザイン宣言」が掲載された。同誌において、「都市連鎖研究体」は、都市形態の成立と変容の根源を都市デザインに再適用する手法を、「環境ノイズエレメント研究チーム」は、風景の持つ「素材性×加工性」を「食材×調理」に見立て、「クッキング・アーバニズム」という手法を提示した。いずれも、目に見える表層空間とその背後にある複数の計画意思からなる深層構造という都市空間の二重構造を認め、それを「かたち」をキーワードに読み解き都市デザインに展開している点で共通する。こうした空間分析をデザインに結び付けようとする動きは、都市デザイン研究体による『日本の都市空間』(彰国社、1968)以来数多く存在するが、その多くが都市のレイヤーを一枚ずつはがしていくような微分的分析に重きが置かれ、具体的なデザインに結びつくものは少なかった。一方で、先行デザインでは、可視・不可視の「かたち」の堆積としての都市を積分的に分析することで、都市構造が要請するデザインのあり方を導き出している。「都市連鎖研究体」のメンバーである清水重敦は、先行する複数の事物の形態が生み出す問題に対する解決行為として定義される「先行デザイン」を、単なる都市デザインの一手法ではなく、デザインのあり方そのものであるとしている。

補足情報

参考文献

『10+1』No.37,「先行デザイン論」,清水重敦,INAX出版,2004
『10+1』No.37,「加工される都市」,宮本佳明,INAX出版,2004
『セヴェラルネス 事物連鎖と人間』,中谷礼仁,鹿島出版会,2005