「戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容」展
- WAR/ ART: 1940-1950 Sequences and Transformations of Modernism
- 更新日
- 2024年03月11日
2013年7月、神奈川県立近代美術館葉山館の開館10周年を記念して開催された企画展。一般に日本の近代美術史と現代美術史の区切りは1945年の敗戦とされているが、この展覧会では1940年代から50年代にかけての絵画を通覧することで、歴史の断絶ではなくむしろ「連鎖」と「変容」があったことを浮き彫りにした。また、同館館長の水沢勉が図録で述べたように「『正統と異端』『都市と田園』『中央と地方』といった対立の図式を相対化する」作品群を提示し、けっして平坦ではない日本近代におけるモダニズムの成熟ぶりを強調した。1951年に鎌倉で開館し、土方定一の強い影響のもとで日本近現代美術史を構築してきた同館のアイデンティティを総括する内容となっている。出品作品の多くは同館所蔵の絵画で占められているが、そのなかに山口蓬春と藤田嗣治の戦争画(東京国立近代美術館蔵の無期限貸与作品)と丸木位里・俊《原爆の図》(原爆の図丸木美術館蔵)が、大きな楔のように割り込む。そのほか、美術史家の矢代幸雄や青木茂が旧蔵した関連図書数百点を絵画とともに並べ、展示内容に資料的な厚みを持たせていた点も特徴的である。
補足情報
参考文献
『日本の近代美術』,土方定一,岩波書店,2010
『美術にぶるっ! ベストセレクション日本近代美術の100年』,東京国立近代美術館,NHKプロモーション,2012
『戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容』,神奈川県立近代美術館,2013