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創作楽器

Experimental Musical Instrument(Custom-made Instrument)
更新日
2024年03月11日

創作楽器とは、既存の楽器を改造し、あるいはまったく新しく作られた楽器のことである。とはいえ、ピアノもヴァイオリンもそもそもあらゆる楽器は「創作楽器」であり、後に広く使われるようになって「普通」の楽器になったと言えるだろう。その意味で「創作楽器」とは、音響生産装置として作られたけれども汎用性を持つツールとしては一般化しなかった楽器、と規定できるだろう。例えば、H・パーチが自分の作品のためだけに作成したたくさんの楽器や、鈴木昭男によって作られた糸電話型の楽器アナラポスなどである(ウェブサイト「OddMusic.com」内のギャラリーではさまざまな創作楽器を見ることができる)。ジョン・ケージのプリペアド・ピアノなど、他の音楽家にも使われるようになったものは、創作楽器と普通の楽器との境界例と考えることができるだろう。創作楽器──特に現代音楽のジャンルにおける創作楽器──の背景には、ルッソロ、ヴァレーズ、ケージに連なる「新しい音」への欲望がある。それは「新しい音」への欲望に応えるために生み出されたのだ。しかし創作楽器は、1950年代に磁気テープとシンセサイザーが登場して(理念的には)あらゆる種類の音響を使えるようになった後も、発明され続けた。それゆえ創作楽器の魅力とは、その「新奇な音」だけではなく、この楽器を用いて音を生産する行為にあると考えることができよう。

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参考文献

Musical Instrument Design: Practical Information for Instrument Making,Bart Hopkin,See Sharp Press,1996